「Dancer in the dark(ダンサーインザダーク)」
監督:ラース・フォン・トリアー
主演:ビョーク
メジャーな作品ですが、この度初めて鑑賞し感激したのでメモを書いておきたい。
いくつかレビューを見ると「救いのないトラウマ映画」「悲劇」という感想が多く、興味を持って観たのだが私は全然違う感想。
この映画は、どんなに不遇で過酷な人生にも、美しい希望があるのだ(希望があって欲しい)ということを表現しているのだと感じた。
確かに表面的なストーリーは、もともと過酷な主人公の人生に更なる不幸が重なり、最悪の結末(死刑判決、執行)を迎える、
という何とも胸くそ悪いシナリオである(個人的には現実世界のリアルが反映されているという点で好きなストーリー)。
映画の美しさのポイントは、
・セルマの息子に対するストレートでシンプルな愛情(親子愛)
・同僚や大家、看守らが主人公を手助けしてくれる隣人愛
・貧しいながらも大好きなミュージカルや芝居を嗜み続ける主人公のアートへの愛
である。
また、上記の美しいポイントに加えて人間の醜いエゴも描かれており素晴らしかった。
・妻に対する見栄から浪費を改善できず、主人公の貯蓄に手をつけ、最後まで妻に状況を白状できない大家の浅はかさ
・「自身の病気が遺伝すると分かっていながら何故子供を産んだのか?」との問いかけに「赤ちゃんをこの手に抱きたかったから」と答える主人公
つまり人間は自分のエゴを満たすために新たな不幸を生み出している、そんな人の弱さも上手く表現されていたと思う。
辛いのは、主人公の死刑執行の原因をつくった大家ファミリーが完全な悪人ではなかった、という点。
大家ファミリーはそれまでとても親切であり、主人公の息子が欲しがっていた自転車をプレゼントするなどの隣人愛を示していたというところ。
ここで人間という生き物の複雑さ(人間が完全な悪人と善人に分類できるほど単純ではない)を描いている。
初めてまともに見れたミュージカル入りの映画でした。
星:★★★★☆
----------------あらすじ----------------
主人公のセルマ(ビョーク)は貧しいチェコ系移民のシングルマザー。
一人息子の目の手術費用を貯めるためにアメリカに渡り、懸命に工場で働いている。
彼女自身先天的な目の病気で、間もなく失明してしまうという。
彼女はミュージカルが大好きで貧しい生活の中でも彼女は芝居の稽古やミュージカル映画の鑑賞に通っており、暇があればミュージカルを演じる空想に浸っている。
セルマ母子と親しい間柄で、大家であり本業は警察官のビルはセルマがこっそり貯めている手術費用貯金をみつける。
一見幸せそうな彼は愛する妻の浪費のために住宅ローンの支払いも滞っており家計が破綻状態、これを家族に打ち明けることができず悩んでいた。
セルマはどんどん悪くなる視力のために、工場でのミスが重なりついにクビを言い渡される。
自宅に戻ると貯めていたお金がなくなっていた、大家のビルが破綻直前の家計の足しにするために盗っていったのだ。
セルマはビルにお金を返してくれと頼みにいく。ビルはいまだ現実と向き合えずにいる。
セルマと揉み合いになり、ビルが出した拳銃が暴発、ビルが死亡
セルマは息子のことを思って裁判では真実の証言をすることなく、死刑宣告を受ける→死刑執行
おわり