さて、私達兄弟のちょっとした好奇心により16年ぶりの再会を果たした我ら親子であった。
実の父親といえど16年も会っていないと感覚は他人のオッサンである。若い頃よりはいくらか恰幅がよくなっている、短く刈り上げた頭は銀髪に近い白髪頭になっている、顔は昔のまま(写真でみた)だ。
面会室のドアを開け、目があった瞬間
「あ、オヤジだ」と本能的に理解した。
顔が私にそっくりなのだ。クリソツ。
笑えるぐらいそっくりだった。
このとき実の父親はどんな心境だったのか。
いくらか驚いたものの、あんなに小さかった二人の実子が成長した姿ではるばる会いにきたことに感激したんじゃないか、お小遣いでも渡そうか、あのときは申し訳なかった!とか考えたんじゃなかろうか.....
後ほど聞いてみたところ、
父「正直お金をせびりにきたのかと思ってめっちゃ焦った」
とのことでした。
さすがは私の実の父親である。この正直な心境を素直に伝えてしまうあたり、ナチュラルにアホなクソ野郎だなと思った。
父親は離婚後養育費を払っていないし、面会もしていないのでいくらか後ろめたさを抱えていたのかもしれない。いつかリベンジされるんしゃないかと頭の片隅で考えていたのかもしれない。
そういう気持ちだったことはしょうがないにしても、50代の分別ある大人が!16年ぶりに再会した息子たちにそんなことを言っちゃうわけ!
私はとてもガッカリした。
自分がこんなしょうもない野郎のDNAを引き継いでいるということに。どこかでもっとマトモな父親像を期待していたのかもしれない。
そんな理想はこの面会室のゴミ箱に捨てちまおう。
父親と30分ほど近況について報告しあった。
色々と聞きたいこともあったが、父も仕事中であったので気をつかって切り上げることにした。最後に連絡先を交換した。
父「何か困ったことがあれば連絡してくれよ」
自分「ありがとう。仕事中に突然悪かった、頑張って」
ぜったい連絡するもんかと思った。
夕日の射す帰り道、弟が笑いながら言った。
弟「てか、マジお前にそっくりじゃね?」
ラーメンを食べてウチに帰った。
END